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 米国の状況は更に進んでおり、さまざまな映像表現にコンピュータが援用され始めていた。編集部にあるCG作品が届けられた。それはロバート・エイブル(Robert Able)というCGアーティストが製作した「シカゴ」だった。

 この作品では、最初にシカゴの遠景が現れる。やがてシアーズタワーの上空から都市の中心に近づいていく。接近するに従い、林立するビル群のディテールが美しく表現されていた。都市や建築物はワイヤフレームによる表現であったが、あたかも見ているものが空を飛ぶ鳥になったようなリアリティ溢れる作品だった。

 鳥のような視線。このようなCG作品でリアリティを確保するためには、飛行する軌跡と共に、加速や減速といった飛行速度の設定が最も重要な要素なのがよく理解できた。

 当時、フロリダに計画されていた開閉型の屋根を持つ総合体育館のCG作品「スタジアム」も見ることができた。シカゴと同様に、遠くから体育館に接近していくと、スムーズな動きで屋根が開いていく。その間も視点の移動は続いており、やがて総合体育館のエレベーションが現れた。

 3次元表現では、前述したように、視点を移動する際の速度の制御や、通常では考えられないように視点を設定することで、見るものに、リアリティやある種の驚きを与えることが可能なのが理解できた。

 また、プレゼンテーションは勿論のこと、建築の計画段階での試行錯誤にも援用できるし、映像表現の技術と融合することによって、このような3次元表現自体がひとつの作品としての質を持つことも理解できた。

 これらの作品もエバンス・アンド・サザーランド(Ivan Sutherland)社のピクチャー・システム2(PS2)によって製作されていた。

 また、米国では、ロバート・エイブルのような優れた才能とコラボレーションする中で、スキッドモア・オウイング・メリル(Skidmore Owing & Merril)社のように、都市の3次元データベースの構築に着手するケースも顕著となっていた。

 ロバート・エイブルの経歴を見ると、UCLA(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校)芸術学部卒業後、バウハウスに留学するなど、建築への強い興味を持ち続けていたのがわかる。

 テレビ業界で活躍し、エミー賞、ゴールデン・グローブ賞なども受賞した後、活動の領域を拡げ、映画「スタートレック」の特撮に参加したり、数多くのCF作品を残している。あまり知られていないが、レナウン・イエイエのCFも手がけている。

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