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 ザイネティックスのXYプロッタで図面を出力する際に、鉛筆の使用が前提だった。それと合わせて、用紙には和紙を使用していた。折り畳んで保管すると、トレシングペーパーでは複写時に、折り目がついてしまう。鉛筆の芯の硬度と筆圧なども、この和紙との相性を試行錯誤しながら決定された。

 出力図面に、手描きで加筆修正するのは、現在のように、設計者がCADシステムに対してインタラクティブに対応できない環境も背景にあった。ディスプレイをインターフェイスとして、加筆修正するのではなく、設計変更があると、再度、数値データをコンピュータに入力し、XYプロッタで出力する。この段階では、XYプロッタが一種、出力確認のためのディスプレイの代役を果たしていたことにもなる。




 取材当時、設計図面に対する対応として、ヒアリングを通して、以下のような背景も確認していた。

・欧米では、設計図書の中でも仕様書が重要に位置を占めており、契約時点で、設計図面は完成品とした取り扱われる。
・設計図面はあくまでも設計図書の一部分であり、我が国の設計者に見られるように設計図面に対する思い入れはない(ようだ)。

 一方、我が国では、設計者が自らの意図をまとめるために設計図面を活用することに重点が置かれ、更にクライアントとの間での変更や修正の打ち合わせにも主に用いられた。設計図面は契約図書の一部というよりも、クライアント、設計者、そして施行会社間でのコミュニケーションのツールとしての役割にポイントが置かれていた。

 特に計画段階では、変更も数多く発生し、そのつど再度、数値データをコンピュータに入力し、XYプロッタで出力するよりも、設計図面そのものに、鉛筆で加筆修正した方が当時は効率的だった。このことと、鉛筆の線の濃淡にまで拘ったことの意味合いは異なる。

 次回以降、実際の設計事例に則して、執筆を続ける。

 かつての取材先の方から、次のようなコメントも寄せられた。自らの考えも整理しつつ、期待に添えるよう、執筆を続けていきたいと考えている。

『ノスタルジーではなく、かつて建築におけるコンピュータ利用で何を目指してきたのか、コンピュータで何でもできる時代になって、何ができて、何が忘れさられたのか?
 ロバート・エイブルの「シカゴ」といっても、言葉の通じない若者がせっせとCGを作っています。
 このサイトが名もなきパイオニアが築き、挫折し、またチャレンジした歩みを伝え、いつの間にか忘れてしまった夢をよびさます核になれば、と期待しています。』

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