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 その間もパソコンの性能向上は続き、パソコンCADシステムが建築の設計実務でも使用できる環境となった。今ではその名称を記憶している人もいないと思うが、「G-Editor」「Cream」などの国産CADシステムもいくつか市場に供給されていた。




 そして、設計者の前に本格的なパソコンCADシステムとして登場したのがオートデスク社のAutoCADだった。しかし、その段階でAutoCADは2次元の汎用的な製図システムとして提供されたものであり、建築に特化したCADシステムではなかった。

 通り芯の例を考えると、当時のAutoCADの位置づけがよくわかる。建築設計では通り芯の両側に柱や梁などが配置されるが他の製造業における製図では通り芯は存在しない。

 通り芯は、ある一定の角度で傾くことがある。そのため、傾いた通り芯を描き、そこに柱や壁を配置していく際には、いわゆるドラフター的な機能も必要だ。また、包絡処理も建築特有の表現だ。

 これらの概念、機能は、汎用的な製図システムとしてのAutoCADでは想定されていなかった。やがてAutoCADをベースにして、AutoCAD上に建築製図に特化したアプリケーションが開発され、建築的なCADシステムとして成長していくが、当初は「裸のまま」のAutoCADが使用されていた。



 この段階でAutoCADの入力方法は大別して二つ用意されていた。ひとつはタブレットを用いて直接、線分や図形を描いていく方法。もうひとつはキーボードからコマンドと数値を入力していく方法であった。

 特に後者のキーボードからコマンドと数値を入力していく方法は従来の建築的な製図方法とは似てもにつかないものだった。しかし、ここで興味深い検証が可能となった。

 建築設計では、初期段階で描かれる手描きのスケッチを考えると顕著なように、設計対象の建築物は正確な数値を伴わない「絵」として描かれる。

 ところがAutoCADに向かい、設計を開始すると、どうしても数値(入力)を意識せざるを得ない。設計(入力)対象の建築物の正確な数値があらかじめおさえられていないと、AutoCADでの作図はできない。

 そのためCADオペレータに対してAutoCADで入力を依頼する際に、設計者は正確な数値を記入したスケッチを手渡さざるを得なくなった。

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