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 その当時、建築(CAD・情報化)関連のセミナーに参加すると、「総合図」という言葉をよく耳にするようになった。総合図とは、一般的には、「建築・構造・設備を一元化した生産設計図・総合図」「設計から施工への情報の橋渡し図面である生産設計図・総合図」などと表現される。

 パソコンCADシステムの側からいうと、いわゆる躯体図に構造図・設備図・内装図など(全て)の図面を付加した「重ね合わせ図」といえる。




 ここまで経過を追ってCADシステムの進化を見てきたが、その間もパソコンの性能向上は目覚ましいものがあり、建築に特化した国産のパソコンCADシステムも次々と登場した。やがてパソコンCADシステムに装備された基本的な設計・作図機能とともに、CADシステム特有のレイヤーが大きな意味をもってくる。

 パソコンCADシステムが登場した当初は、レイヤーの数も制限されていた。パソコンCADシステムを使用する設計者も、レイヤーにそれほど大きな位置づけを与えてはいなかった。通り芯、寸法標記、文字標記そして躯体などに大別すれば事足りると考えていた。

 使用できるレイヤー数が3桁(128・256など)になると、すでにパソコンCADシステムによる建築のデジタル化のメリットに気がついていた設計者は新たな試行錯誤を始める。




 あるゼネコンの設計部を訪ねた時のことだ。取材対象の建築物のCAD図面を画面上に表示してもらった。大量な線分が画面上に現れ、まるで抽象画のようにも見え、とても建築図面には見えなかった。意匠、構造、設備を網羅した全ての図面を重ね合わせて表示していたからだ。手描きの図面ではこんなことは決してできないし、もしも書き込めたとしても、線分数が多すぎて真っ黒な図面となってしまう。

 あるコマンドを入力した。すると、表示されている図面データが瞬時に切り替わり、設備図が画面上に現れた。当然のように、そこには主要な構造部材が表示されていた。その部分は、意匠図(など)と共有していたわけだ。

 このように、使用できるレイヤーの数が増えることで、CADシステムによって作成される図面は大きく性格を変えていった。また、それは設計組織のあり方そのものにも影響を与えていった。

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