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 パソコンCADシステムの運用では、レイヤーの存在を無視できないことは理解できた。しかし、レイヤー自体は、パソコンCADシステムが装備するひとつの機能である。その機能を元に設計製図のルールを確立し、複数の組織間を流通させることが次の課題となった。

 そこでレイヤー利用に何らかのスタンダードが存在しないのか、探し始めた。残念ながら、極めて閉鎖性の強いわが国の状況では、スタンダードなルールの存在は確認できなかった。せっかくパソコンCADシステム運用のノウハウやCADデータ流通のルールが作られても、それらは閉じられたものであり、業界全体に対して横断的に開かれていくような環境にはなかった。




 そんな時、AIA(The American Institute of Architects)のレイヤーに関するドキュメントを入手する機会があった。そこにはレイヤー利用の詳細なルールが記されていた。全レイヤーはグループ化され、個々に連番がふられ、振り分けられた建築部材の名称、ファイル名がボルト一本に至るまで記されていた。

 また、このレイヤー利用のルールは建築内部に閉じられたものではなく、政府機関は勿論のこと、大学などの研究機関そして民間の建材関連メーカー、パソコンCADメーカー、さらに建築のユーザーであるクライアントに対しても開かれたものだった。

 このレイヤー利用のルール作成に際しては開かれた討論や検討が行われており、その後、合意形成がなされたこともわかった。背景には、米国が契約社会であり、瑕疵に対する責任の所在を明らかにする必要があるものとも考えられた。

 このようにして業界全体で合意されたルールは一種の公共財となる。インターネットの発展などを通じて、さまざまなデータが瞬時の内に流通する状況においては、ますますその効果を発揮することになる。

(C)The American Institute of Architects,

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