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 ある大手設計事務所を訪問した際のことだった。玄関の待ち合わせスペースで待っていると、図面の筒を抱えた初老の男性がフロッピー・ディスクを納めた箱の中身を確認していた。

 やがて担当の設計者が現れ、その図面とフロッピー・ディスクを受け取り、代わりに大量のトレシングペーパーを手渡していた。そのトレシングペーパーにはその元請け事務所の名称があらかじめ印刷されているはずだ。出力による納品に加えて、CADデータによる納品が現実のものとなった。




 この段階ではすでにパソコン通信によるCADデータの送受信が行われていたが、現在のように高速な通信環境が整備されておらず、大容量のCADデータの受け渡しには、通信コストがかかり過ぎた。そのためフロッピー・ディスクでの納品が中心であった。

 CADシステムの運用が協力事務所も巻き込んだ動きとなる中で、さまざまな課題も顕在化していった。それは主にCADデータの互換性の問題として現れた。比較的、安価な建築用パソコンCADシステムも続々と登場していたが、データ互換という面では、AutoCADのDXFファイルが標準となりつつあった。

 財政的にそれほど恵まれてない小規模組織では、高価なAutoCADを設計者一人にワンセットは購入できないでいた。そこで実際の設計図作成には、安価なパソコンCADシステムを使用し、納品時にDXFファイルに変換して納品するということもあった。

 1セットだけ購入されたAutoCADは、DXFファイル変換用のための専用システムとして利用されていたわけだ。

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