MoMAオンラインストアジャパン
top pagearchitecture>1982年〜[31]











 このような経過を経て、関心は施工現場へと移り、複数の施工現場へと足繁く通うこととなった。ある中堅ゼネコンのマンションの現場を訪ねた。現場事務所に入ると、若い女性がパソコンCADシステムで図面を描いていた。懇意にしていた所長にたずねると、「昔から知り合いの施工図事務所の女性」だという。

 現場の所長には専属の施工図事務所があるとは以前から聞いていた。その施工図事務所とは十数年来のつき合いだという。詳しく話を聞くと、その所長はパソコンCADシステムを購入し、当初は、担当の現場で自ら施工図を描いていたという。ある程度、パソコンCADシステムによる施工図作成に習熟した段階で、施工図事務所側に同様のシステムを推奨し、その女性に施工図作成を任せていた。

 このパソコンCADシステムは所長がポケットマネーで購入したものだった。XYプロッタも含めて、かなりの金額だった。そうせざるを得ない背景があった。




 このゼネコンでは、その施工現場を管轄する支店に専用の施工図CADシステムを導入していた。この施工図CADシステムについては、後に詳しく触れるが、製図に特化した2次元のパソコンCADシステムとは性格を異にするものだった。

 このように、当時、ゼネコンの中には、専用の施工図CADシステムを導入、支店などに施工図センターを立ち上げ、一括して施工図を描こうという動きがあった、このこと自体は、建築のデジタル化への試行錯誤の一環であり、積極的な試みであったが、少なからず問題もあった。

 施工図CADシステムは施工図作成のルールを内包した専用システムだったが、支店で操作するのはオペレータだった。そして、このオペレータと施工現場とのコミュニケーションは円滑には行われていなかった。

 また、フレキシブルな対応が時々刻々と求められる施工現場のスピードに、支店のオペレータでは対応できなかった。そこで所長は自ら施工現場に製図に特化した2次元のパソコンCADシステムを導入し、施工図事務所との協力の下、施工図を描く方針をとった。

前回< >次回




MoMAstore
Copyright (C) 2012 Archinet Japan. All rights reserved.