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『トム・ケイリン監督 来日記者会見』
監督:トム・ケイリン
キャスト: ジュリアン・ムーア、スティーヴン・ディレイン、エディ・レッドメイン、エレナ・アナヤ、ウナックス・ウガルデ、ベレン・ルエダ、ヒュー・ダンシーなど
会場:2008年4月18日(金)16時からBunkamuraオーチャードホール内ビュッフェ
2008年初夏公開
公式サイト:
美しすぎる母

 貧しい家庭で育ちながらも、その美貌で大富豪ブルックスと結婚したバーバラ。彼女は待望の息子、トニーを授かり、幸せの絶頂にいた。だが、その幸せは長くは続かなかった。数年後、ブルックスが家族を捨て家を出ると、残された彼女はトニーへ偏った愛情を示していく…。ニューヨーク、パリ、カダケス、マジョルカ島、そしてロンドン。優雅に国々を彷徨い続けた二人の裏側にある、隠された"野蛮な関係"とは?そして、なぜトニーは彼女を殺したのか?

Savage Grace(原著)
 「恍惚」でタブーの愛を描いたトム・ケイリン監督が、実際に起こった息子による母親殺害事件を基に執筆された原作「SAVAGE GRACE(直訳「野蛮な優美さ」)」を映画化。

 主演は本作で体当たりの演技に挑んだ大女優ジュリアン・ムーア。実在したバーバラを妖艶な魅力で演じ、見るものを魅了する。また、バーバラの息子・トニーは新鋭エディ・レッドメイン。二人の迫真の演技が時代に埋もれた衝撃のスキャンダルを浮き彫りにしていく。

T(トム・ケイリン監督):「美しすぎる母」についてみなさんと分かち合えること、そのために東京に来れたことがとてもうれしい。ありがとうございます。
▼「監督インタビュー

K(ケイティ・ルーメル・プロデューサー):熱意を持って日本にこの作品を配給してくれてありがとうございます。皆さん、来てくださってありがとうございます。

Q:本作品「美しすぎる母」ではさまざまなタブーが描かれているが、これを映画化しようと思った理由は何ですか?

K:一番大きかったのは、複雑なキャラクターが登場する、複雑なストーリーであったこと。決してシンプルな行為ではないからこそ、面白い。キャラクターたちがどのような人物だったのか、なぜそのような行動をしたのか、なぜそのような道を選んだのか、という興味が原作と出会ってからずっと続いている。

K:本作品は、「事実は小説より奇なり」、事実がフィクションよりもよりショッキングであるということのよい例。古典悲劇に通じるような面も持ち合わせている。愛の限界や家族関係(夫婦や母と息子)について描いている。

Q:実際にこの事件を映像化するにあたってのアプローチの仕方、気をつけたことなどは何ですか?

T:映画の中では1946年から1972年という大変長いスパン、異なる時代を描いている。各キャラクターの長い旅路を描いているという点でとてもユニークだと思う。それ実現するために、才能豊かな俳優たちが集まってくれた。最もすばらしい女優の一人であるジュリアン・ムーア、まだ知らない人もいるかもしれないが、新星エディ・レッドメイン、ブルックス役のスティーヴン・ディレインなど、非常に才能豊かで個性的な俳優たちとコラボレートすることで、実現できた。
 隣にスーツがあるので(会見のために、ジュリアンが送ってくれた劇中で使用されていたピンクのスーツがTの横に展示されていた)触れるが、これは、カール・ラガーフェルドがジュリアンのために特別にデザインしたもので大変思い出深い。バルセロナでの撮影以来、目にしていなかったので、今見ると大変懐かしい。
 また、本作品は4つの国を舞台に展開していく。でも、撮影はすべてバルセロナで行われている。これも今回の一つのチャレンジ。アメリカ人である自分がスペインで映画を作るということもチャレンジだった。

Q:ジュリアン・ムーア、エディ・レッドメインを起用した理由は何ですか?

K:まず、ジュリアンについて。クリエイティブな観点からは、監督が早くから「彼女しかいない」と決めていた。ファイナンシャルの観点からは、彼女の起用は、資金を集めるための大きな助けになった。
 エディは通常のオーディションを経て決めた。もちろん出資者には納得してもらわなければならなかったが、それも難なく納得してもらえた。

Q:ジュリアン・ムーアとエディ・レッドメインとの関係性はどうでしたか?

T:二人のコラボレーションというのは、オーディションの段階から始まった。トニー役の採集オーディションに、ジュリアンが同席してくれ、最終選考まで残った5人を一緒にみてくれた。その一人目がエディだった。彼を見て私もジュリアンも何か感じたところがあり、二人で顔をみあわせて「みつかったね!」と合図した。
 俳優としては、二人とも全く別のアプローチをとる。ジュリアンは本能で演技をする。自分の感情に自然にアクセスができる。撮影のときも、本番前までは、最近読んだ本や、さっき食べた食事の話をしていて、「アクション!」というと、さっと「バーバラ」が現れる。他方、エディは、英国人俳優ということもあり、リハーサルや分析を求める。こういった違うアプローチをとる二人の間でなにか化学反応のようなものを起こすことができた。また、エディは本当にジュリアンの本物の息子といえるようなルックスをしている。

Q:ジュリアン・ムーアが各場面で着ていた衣装は彼女の内面を表しているように感じたが、衣装について何か意図したことはありますか?

K:衣装はもちろん内面を表している。また、この作品で重要だったのは、それぞれの衣装が各キャラクターの段階を表している点。過程をみせるために重要だった。すなわち、1946年では、バーバラはとても若い女性で、ラベンダー色のやわらかで、若々しいドレスを着ている。これは、最後のシーンで着ている、赤い、とても強い色のシャネルのスーツとは対照的なものだ。この衣装では彼女の強烈な気持ちが表されている。衣装や小道具がどれほど役作りに役立つか実感した。
 また、自分自身、映画の勉強を通常の形でしたわけではなく、ビジュアルアーティストとして絵画などを勉強していたので、色がいかにストーリーテリングに役立つのか興味がある。それぞれのシーンも色で考えている。たとえば、最後のシーンでは、とても暗い茶色をイメージしているし、パリでのシーンは華やかなピンクなどカラフルなイメージ、空港のシーンでは、爆発するようなジバンシーの赤いワンピースをジュリアンに着せていて、これは彼女の感情がいかに強烈なものであるかを表している。
 今回衣装をスペイン人のガブリエラ・サラヴェッリという普段はオペラの衣装を担当している人にお願いしている。本作でもオペラ的な部分がある。また、オートクチュール衣装をディディエ・リュドに担当してもらった。ヴィンテージの服をたくさん持っている人で、彼らの力をかりることで、ジバンシーやシャネルの衣装を使用することができた。ジュリアンがカール・ラガーフェルドと親交が深いので、彼女のために、この横にあるドレスを作ってくれた。彼のような才能あるデザイナーがこの作品のために特別に衣装を作ってくれるというのは、本当に幸運。

Q:衝撃的な実話というのはたくさんあるが、なぜ特にこの題材を選んだのですか?

T:確かに衝撃的な実話はたくさんあるわけだが、本作で扱った話は、最も根本的な人間関係、つまり家族関係をもとに起きた事件。人生の中で重要な愛、愛の限界、愛の境界を扱った作品。キャラクターはこの話の中で人間の最も基本的なものを描き出している。登場人物は極端なところまでいってしまうが、それを思いやりをもって描いたつもり。そうすることによって、われわれ皆がもっている人間の本質を垣間見たり、探究したりすることができるのではないかと思う。ジュリアンはアメリカ人だが、そのほか非常にエキサイティングでインターナショナルなキャストが集まってくれた。
 また、本作はすべて悲しさと美しさ、エレガンスとバイオレンス、優しさと怒りなどの 真逆の資質を取り扱っているところもその理由である。

Q:キャラクターの心理的な部分に興味があるのだが、なぜトニーは母親を殺したのですか?

T:普通は母親との密接な関係を経て、巣立っていき、自分の道を見つけなければならないのだが、不幸なことにトニーは巣立つまでに至らなかった。バーバラにはナルシスティックな部分があり、周りの人はみんな自分を愛していなければならなかったし、自分が中心でなければならなかったので、母と息子の密接な関係は時を経て、とても破滅的な関係へと変わっていった。
 そして、バーバラの死をもってある意味で二人とも解放されると考えることもできる。最後のシーンで考えていただきたいのは、「母は息子に殺されたのか」もしくは「母親は自殺のために息子を利用したのか」ということ。どちらの要素もあるとおもうが、どちらかといえば、後者が妥当ではないかと思う。バーバラは絶望、孤独を感じ、どうしようもないところまで追い詰められた。そこから抜け出すためには、一番愛している息子に自分を殺させるしかなかった。

Q:(ケイティ・ルーメルプロデューサーに対して)女性から見て、バーバラの生き方をどう思いますか?

K:女性の観点からというと難しいが、バーバラはやはりとてもナルシスティックな女性。映画スターに憧れたナルシスティックな女性。これが、女性の観点からの感想かどうかはわからないが。
 だが、ジュリアンが、また私自身がこの作品に惹かれた理由というのは、「トゥルークライム」、実際にあった事件において、バーバラのような女性は非常に珍しいからだと思う。彼女はとても強烈で、自分が思うほうにまっしぐらにどんどん進んでいく。

Q:ジュリアン・ムーアのメイクについて。若いときは母親らしく、年をとるごとに女っぽく、色っぽくなっていくが、何か工夫されたことはありますか?

T:今回、幸運なことにスペイン人の姉妹がメイクを担当してくれた。スペインのメイク界をリードしている方たちで、ニコール・キッドマン主演の「アザーズ」のメイクも担当している。私は、映画の中で特殊メイクでふけた様子を演出しているのを見ると鼻白んでしまうタイプなので、特殊メイクは避けた。また、今回、衣装でかなり時のうつろいを表現できたので、それに加えてメイクで補ったというかんじ。ジュリアンが絶望するシーンは、女優さんにとっては珍しいことなのだが、全くのノーメイクで撮影された。
 最後のシャネル・スーツを着ているジュリアンは、まさに「社交界の女」というようなきつく、隙のないメイクになっている。物語は、ボイスオーバーからもわかるように、息子のトニーによる主観的な視点ですすめられていく。彼の目にうつるバーバラはあまり年を重ねない。彼が理想化した母親像が登場するので、あまり老けさせるということを意識する必要はなかった。メイクだけでなく、それぞれの人生のステージでのジュリアンの振舞い方や小道具の使い方によっても年齢を表現している。

Q:バルセロナでのロケの思い出は何かありますか?

K:素敵なロケ地がたくさんあったのだが、マジョルカでのシーンで使用しているお城がなんと千年の歴史があるものだった。とてもすばらしい体験だった。幽霊がたくさんいるようなお城だった。
 バルセロナだけで全てのロケ地を見つけるのはやはり大きなチャレンジだった。そこしかない、というロケ地でもなんとか見つけ、無事撮影することができた。

T:夏だったので、ビーチでのロケ地はすぐに見つかると思っていたが、夏ともなると、みんながビーチに行ってしまうので、逆にとても困難だった。地元のビーチと交渉して、許可もらった。だが、行くと、ヌーディストがたくさんいた。作品では60年代が舞台のシーンだったので、設定としてヌーディストはいてはいけない。ジュリアンの小さな娘がきていたのだが、「見て見て!あの人たち裸だよ!」などと言っていた。スタッフの仕事は、画面に裸の人が入らないように、はけていただくことだった。
 もう一つが、冒頭のニューヨークの通りのシーン。バルセロナでたった1ブロックだけ、「これだったらなんとかニューヨークに見えるだろう」という通りがあった。その通りに建っているビル一つ一つの住人全員に撮影の許可を取らなければならなかった。このシーンは撮影の初日だったのが、真夏で湿度も高く、とても蒸し暑い日だった。だが、映画の中では冬だったので、雪のかわりに塩をまいて撮影した。
 かわいそうな役者たちは真冬の撮影なので、毛皮などをきなければならず、ワンカットとるごとにエアコンの部屋に移動し、汗をふいた。スクリーンに映っているものと、撮影現場が全くちがうというよい例。

(C) Lace Curtain, Monfort Producciones and Celluloid Dreams Production.





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