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 ファビュラス・ベイカー・ボーイズ(原題:THE FABULOUS BAKER BOYS)。

 うだつの上がらない中年の兄弟ピアノ・ジュオと彼らの前に突然現れた美しいジャズ・シンカーとの物語。音楽を手がけたのはデーヴ・グルーシン。ジャズのスタンダードが物語を引き立てる。

 それを聴くために何度も見直してしまうほど、ミシェル・ファイファー演じるスージー・ダイヤモンドがエンドロールで歌うマイ・ファニー・バレンタインが素晴らしい。




 物語の舞台はシアトル。ジャック(ジェフ・ブリッジス)とフランク(ボー・ブリッジス)のベイカー兄弟は、ザ・ファビュラス・ベイカー・ボーイズというデュオを組み、場末のナイトクラブを夜な夜な回っている。

 酔客はピアノ演奏に興味はない。仕方ないので、演奏の合間に掛け合い漫談をするが、それも全く受けない。かつてジャズ・ピアニストをめざし、挫折した弟のジャックは嫌々やっている。

 興行師は首切りを暗にフランク伝える。家族もあり、生活がかかっているフランクは、ヴォーカルを入れて、やり直そうと考え、ある日、オーディションを開く。やってきたのはとても使い物にはならない女の子ばかり。
 二人がもう駄目だなと顔を見合わせていると、スージー(ミシェル・ファイファー)が駆け込んでくる。オーディションは終わったと伝えるが、せっかくやってきたのだから歌わせて欲しいとスージーは譲らない。一曲だけとスージーの歌を聴く。これはいける。二人は頷きあっていた。新しいザ・ファビュラス・ベイカー・ボーイズが誕生する。




 ジャックは仕事が終わると、馴染みのジャがクラブでピアノを弾いている。彼の才能を知っているオーナーは戻ってきて欲しいのだが、フランクのことを思いやる彼は決断できない。そんな苛立ちから、今夜も酒浸りで、一人家に帰る。

 独り身の彼は年老いた犬と暮らしている。二日酔いでようやくベッドから離れると、一人の女の子が彼の身の回りの世話をかいがいしくしている。まるで恋人か夫婦のように..。

 その女の子も、母親が次々と変える男と折り合いが悪く、家に居づらい辛い事情を抱えている。ある日、ジャックは彼女を怒鳴りつけてしまう。泣き出しそうな顔で彼女は出ていった。またやってしまった。謝らなければと追いかけると、彼女は屋上に一人で座っていた。「嫌なことがあったのね」と彼女に逆に慰められている。見透かされたジャックは笑ってしまう。「エンパイヤーステイトビルでホットドック食べるかい」。ビルの下からクラクションがなった。母親の新しい男と遊びに行くという。




 新生ザ・ファビュラス・ベイカー・ボーイズはスージーの参加で引く手あまたとなる。高級ホテルからも声がかかり、三人は意気揚々とツアーに出かけていく。ようやく成功への道筋が見えてきた。

 そんなある日、家庭の事情でフランクは一人、帰宅する。残されたジャックとスージーはフランクの演出を無視し、演奏を始める。観客はジャックのジャジーなピアノ演奏とけだるさも魅力的なスージーの歌声に喝采を送る。

 大晦日の夜。カウントダウンも終わり、観客が引き上げると、一人残ったジャックはピアノを引き始めた。それを眺めているスージー。二人はピアノの前で寄り添い、お互いの気持ちを確かめ合っていた。

 ツアーは成功裏に終わった。ようやく運が向いてきたと嬉しくて仕方ないフランクは二人の関係をまだ知らない。相変わらず自分の演出を押し付けるが、ジャックとスージーはそれを無視する。




 何かが変わってしまっている。フランクがジャックを問いつめると、スージーとの関係を告白した。商品に手出すとは何事かと怒り出すフランク。二人は殴り合いを始める。そしてジャックはザ・ファビュラス・ベイカー・ボーイズではやっていけないと宣言する。

 ジャックの気持ちを確かめたいのか、スージーはある日、彼の家を訪ね、一夜を共にする。フランクへの後ろめたさもあり、苛立っているジャックはスージーに素直になれない。ようやく安らげる場所を見つけられたのに、ジャックの苛立ちか疎ましい彼女は、そのまま出ていく。
 やがてスージーは、もう一度、自らの歌への思いを実現するためザ・ファビュラス・ベイカー・ボーイズから去っていった。

 何かが終わってしまった。ある日、ジャックはフランクの家を訪ねる。ザ・ファビュラス・ベイカー・ボーイズをやめるといったがフランクのことが気がかりだった。
 フランクは子供達にピアノでも教えてやっていくよと、吹っ切れたようにジャックに話す。気がつくと、二人はかつて父親から教えられた曲をピアノで連弾していた。

 ジャックはスージーの家も訪ねていく。家の外で待っていると、新しい仕事場に出かけるスージーが現れた。お互いの気持ちはわかっているけれど、まだ素直にはなれない。彼女はコマーシャル歌手に採用されたと告げた。

 「フランクに会えないのと寂しいわ」「アイツはそういう奴なのさ」「また会えるかな」。スージーとジャックは別々の方向に歩き出していた。スージーの歌うMy funny valentineと共に。

My funny valentine;
Sweet, comic valentine;
You make me smile with my heart. Is your figure - less than Greek?
Is your mouth - a little weak?
When you open it to speak, are you smart?
Your looks are laughable;
Unphotographable;
Yet, you're my favorite work of art. Don't change a hair for me;
Not if you care for me;
Stay, little valentine, stay!
Each day is valentine's day.

どこか可笑しいけれど可愛い僕のバレンタイン
だから君を見ていると、思わず僕は微笑んでしまうんだ
ギリシャ彫刻のように完璧じゃないし、口元もだって悪戯っぽいし、あまり賢いこともいわないし..
それに写真向きじゃあないしね
でも、僕にとっては最高の芸術作品なんだ
だから髪型だって絶対に変えちゃだめだよ
そして、僕のことを少しでも愛してくれているなら
ずっとそのままのバレンタインでいいしさ
そうすれば、僕には毎日が君のためのバレンタインズ・デーになるからさ


監督:スティーヴ・クローヴス
製作:ポーラ・ワインスタイン、マーク・ローゼンバーグ
製作総指揮:シドニー・ポラック
脚本:スティーヴ・クローヴス
音楽:デーヴ・グルーシン
撮影:ミハエル・バルハウス
キャスト:ミシェル・ファイファー、ジェフ・ブリッジス、ボー・ブリッジス、エリー・ラーブ、ジェニファー・ティリーなど

配給:ギャガ・コミュニケーションズ
1989年/アメリカ/109分

2008.09.28掲載
カレンダー・ガールズ(CALENDAR GIRLS))
アイリスへの手紙(STANLEY & IRIS)
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