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 近距離恋愛(原題:MADE OF HONOR)。

 2008年のニューヨーク。トム(パトリック・デンプシー)とハンナ(ミシェル・モナハン)は大学時代から10年来の大親友。週末には街を二人で散策し、食事も一緒。大好きなケーキをふたつ頼み、お互いに分け合っている。たわいもないジョークでも笑えるし、話も尽きることがない。

 ところがある日、ハンナが突然、婚約する。トムはハンナから花嫁付添い人(Maid of Honor)になってほしいと頼まれる。男なのに花嫁付添い人....。彼はハンナのためならばと引き受ける。ハンナの結婚準備が進む中で、トムは気付き始める。ハンナを愛しているのかもしれない。果たしてトムは自分の思いをハンナ告白できるのか、その時、花嫁の決断は....。

 監督のポール・ウェイランドはイギリス出身、広告代理店でコピーライターとして働き、1980年、ポール・ウェイランド・フィルム・カンパニーを設立、数々のコマーシャルを手がけ、世界的にも著名に製作会社へと育てた。その後、映画に進出し、1997年にはヒューストン国際映画祭作品賞を受賞したジャン・レノ主演の「ロザンナのために」、ローワン・アトソン主演の「Blackadder Back & Forth」などを監督する。

 パトリック・デンプシーは舞台「トーチソング・トリロジー」のオーディションで見出され、ニューヨークなどでも舞台に立った。映画デビューは1985年、テレビドラマ「グレイズ・アナトミー」で大ブレイクした。
 ミシェル・モナハンはテレビドラマからキャリアをスタートさせ、2001年に映画「PERFUME パフューム」でデビュー。「運命の女」ではリチャード・ギアの秘書役を演じた。その後も「ボーン・スプレマシー」「Mr.&Mrs. スミス」といった話題作に出演し、「キスキス、バンバン」「スタンドアップ」では重要な役どころを好演。2006年にはメガヒット・シリーズ第3弾の「M:i:III」でヒロインに大抜擢され、一躍その名を知られる。

  2008年7月12日(土)より日比谷みゆき座ほか全国ロードショー公開。




 1998年、ハロウィン・パーティーで盛り上がる大学の寮。ビル・クリントンの仮面を被った男が「モニカ、モニカ」と叫びながら、目当ての女子学生を捜している。お互い合意の上だからとノックもせず、いきなり彼女の部屋に入り、ベッドに忍び込む。突然、彼女は悲鳴を上げる。人違いだった。それがトムとハンナの物語の発端。

 トムが女たらしなのは学生の間でも有名。片っ端から新入生手を出しているのをハンナも知っている。ハンナにお目当ての彼女は向こうの部屋だと軽くいなされる。トムが「モニカ」の部屋のドアを開けると泥酔している。今晩はもう駄目だ...。

 2008年のニューヨーク。トムとハンナはジョークをいいながら街を歩いている。他人が見れば二人は仲のよい恋人にしか見えない。でも、二人は大親友。

 高級スポーツカーを乗り回しているトム。収入源はスターバックス。熱いカップをもてるように工夫した「カバー・スリーブ」を発明し、それがひとつ使われると10セントが手元に入ってくる。定職につく必要もなく、ベッドインできる女性をナンパし放題の毎日だ。

 トムには女性とつきあうルールがあった。どんなに素敵な女性でも二晩続けてデートはしない。電話番号を手に入れても甘く見られるといけないので24時間は電話しない。深い関係になっても家族には紹介しない。そして、自宅には絶対に入れない。

 ハンナは努力して資格を取得し、メトロポリタン美術館で絵画修復の仕事をしている。仲のよい両親に育てられ、亡くなった父の思い出を胸にしまいながら、母親とも姉妹のように仲がいい。そんな彼女は結婚こそ、人生で最も大切なものだと信じている。

 ライフスタイルも、男女関係への思いも、まるで正反対の二人。それでも毎週、日曜日には必ず二人の時間を過ごしている。男女の友情...。その存在の真偽の前に、二人の行動を見れば、何となく行き末はわかる。

 美味しいケーキ屋があれば列に並んででも食べたい。お互いに好きなケーキを注文し、フォークが触れても平気で分け合っている。レストランでは決して油で揚げた飲茶は注文しない。冷やかしで立ち寄るアンティークショップはお気に入りの場所。大の親友がたまたま異性だったということ。




 ある日、ハンナは絵画の買い付けでスコットランドに6週間、出張することになった。いつも日曜日にはハンナがいたのに、トムはどうやって時間を過ごせばよいのか混乱している。携帯電話の電波は途切れがちだし、通じたと思えば、向こうは真夜中の3時。

 ハンナのいない空白を埋めるかのように、トムは日曜日にもナンパに精を出す。大好きなベーカリーに行けば、どうして並んでまで食べるのかと嫌がられ、アンティークはがらくた扱いされる。頼んだ飲茶は揚げ物ばかり。何かが違う。やっぱりハンナがいないと駄目だ。

 待ちに待ったハンナが帰ってきた。トムは花束を抱え、意気揚々とハンナの待ってる店に向かった。ハンナがいる。花束を渡そうとした瞬間、彼女の隣に座る男が目に付いた。

 スコットランドからやってきたコリンだとハンナが紹介する。どうも様子がおかしい。二人はうっとりと見つめ合っている。そしてハンナから彼と婚約したと告白される。しかも二週間後にスコットランドで結婚式をあげるという。

 サプライズはまだあった。ハンナは花嫁付添人、それも一番責任の重いメイド・オブ・オナー(MADE OF HONOR)になって欲しいという。訳も分からぬままにトムは引き受けるが、どうしてもコリントとのことが納得ではない。

 大切なハンナがあんなスコットランド人にもっていかれる。まだ彼女への思いに迷いながら、何とかコリンをぎゃふんといわせたい。トムは友人とやっているバスケット・チームの練習にコリンを誘う。スコットランド人はバスケットはできないだろう。ところがコリンは何本もダンクシュートを決める。彼は運動も万能で、しかもシャワー室では、みてはいけない「巨大」なものを見てしまう。

 これは負けだと、意気消沈するトムに友人たちが入れ知恵をする。メイド・オブ・オナーは結婚式まで花嫁にずっと付き添うのだから、その間にハンナの気持ちが変わるようにしむけるのだと。

 これまでつきあった女性も招き入れたことのない自宅でトムはハンナのために婚前祝いパーティを開く。

 ここはニューヨーク、スコットランドとは違うと、精一杯の余興を準備するが、余りにも下品でハンナのひんしゅくをかってしまう。「結婚を信じていないあなただから、こんなことになった」。ハンナは傷ついたとトムに伝える。

 こうなったら、ハンナのためにしっかりとメイド・オブ・オナーの役を務める以外にない。そう決心したトムを残し、ハンナはスコットランドに旅立っていった。




 トムがスコットランドに着く。ニューヨークとは全く違う。雄大な自然、湖を渡っているとコリンとトハンナか待っている城が見える。トムと一緒に花嫁付添人を務めるハンナの友人の女性たちは、凄いと歓声を上げている。すると、船を操作する地元の人から、コリンはあの城の他に、季節毎に滞在する城をもっている聞かされる。

 対岸に着くと、レンジローバーの車列が待っている。コリンの正体が少しずつトムにもわかってきた。彼は名門のスコッチウィスキー・メーカーの御曹司で公爵の資格ももっていた。かつてトムから酷いふられ方をしたハンナの妹からは「カバー・スリーブの10セントではとてもかなわないわね」と嫌みをいわれる。

 ハンナを取り戻したい。ようやく、自分の思いに気がついたトムの奮闘が始まる。ハンナは動物愛護精神の強い女性。それなのに、ディナーにはコリンがしとめた鹿料理が出される。周りの壁には沢山の剥製も飾られている。
 結婚式の当日、ハンナのウエディング・ドレスにはコリン家伝統のタータンチェックがあしらわれ、髪型もヘヤースプレーでがちがちに固められる。ハンナが似合うとサムに聞くと、「とても...」と口ごもっている。ハンナも何かが違うと思い始めていた。

 トムも心の傷を抱えていた。彼の父親は何度も離婚し、そのつど若い女性と再婚を繰り返している。その父親はとても「良い奴」だから、自分が決して幸福ではなく、残産目当で若い女性が近づいてくるのも知っている。トムは結婚が怖かったに違いない。

 そんなトムだから、女性には素直な愛情表現ができない。街中で、犬を見つければ、すぐに近づき、頭をなぜ回し、キスをして「アイ・ラブ・ユー」と語りかけている。人間の女性を相手にしたら.....。

 そして、ベッドで見つめ合い、「ビル」「モニカ」と呼びながら抱き合っている二人。10年前のハロウィンの夜、もうトムは本当の「モニカ」を見つけていたのかもしれい。




 この作品をみてほっとした。2008年、現在のニューヨークに暮らすトムとハンナの物語り。街は賑わっているし、美味しいレストランや洒落たアンティーク・ショップも続々と誕生している。時には辛辣に批評しながら、じゃれ合うように街を歩いている二人。彼らニューヨーカーは決して9.11もイラクも忘れてはいないが、ようやく人生を楽しむ余裕が生まれたのかもしれない。

 この映画には男女の関係を解き明かすいくつかの鍵が隠されている。セックスはとても大切だけど、普段の会話はもっと大切。とにかく話しが合うのが一番。二人だけしか通じないジョークも関係の潤滑油。二人だけにしかというのが大切。

 この国では「焼き肉を二人で食べている男女はできている」とまことしやかに信じられているように、一緒に食事をするのは性的な関係の隠喩だといわれる。そう考えながら食事する男女はいないだろうが、自分が食べているケーキに、相手のフォークが触れても大丈夫というのは、心理的に全てを許しているのかもしれない。

 街でナンパして、二晩、続けてデートしない相手ならばセックスだけで済むのかもしれない。でも、結婚は、それが続けばという前提はあるが、途方もなく長い時間を一緒に過ごす。ハンナがいない街をトムが彷徨っている時、セントラル・パークでボートに乗った年老いたカップル手助けをするシーンがある。その時、すでにトムにはハンナとの行く末が見えていたのかもしれない。

 本作の国内試写会は5月2日に行われた。ニュース報道によると、米国では5月1日にレッドカーペット・プレミア試写が行われ、5月2日に封切られた。製作者の政治的な立場はわからないし、政治的なメッセージも見あたらない。

 それでも「ビル」と「モニカ」が誰を指すのかはがわかる。「ビル」と「ヒラリー」の関係は、この二人に似ているのかもしれない。最強の政治的な戦友であり、「モニカ」の事件を経て、今では最良の友人となった二人。

 ヒラリーは予備選で正念場を迎えている。ちょっと進歩的で、自由の大切さを知っているニューヨーカーは「モニカ」に手を出してしまった「ビル」が好きなのだ。「ビル」と同じように、彼らが「ヒラリー」を大好きになれれば、予備選での大逆転もあるかもしれないし、本作公開の7月12日には結果は出ているだろう。


監督:ポール・ウェイランド
原案:アダム・スティキエル
脚本:アダム・スティキエル、デボラ・カプラン、ハリー・エルフォント
音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
キャスト:パトリック・デンプシー、ミシェル・モナハン、ケヴィン・マクキッド、ケリー・カールソン、ビジー・フィリップス、シドニー・ポラック、キャスリーン・クインラン、カディーム・ハーディソンほか

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2008年/アメリカ・イギリス/101分
公式ホームページ(英文)

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2008.05.03掲載
マンデラの名もなき看守(GOODBYE BAFANA)
カレンダー・ガールズ(CALENDAR GIRLS)
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