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ジョン・コルトレーンは、マイルス・デイビスと同時代に活躍したサックス奏者。彼は求道者的な姿勢でジャズに取り組み、一時代を築きました。
そんな厳しい姿勢からちょっととっつきにくいとの先入観をもありますが、バラードの名手でもありました。歌詞が浮かんでくるようにサックスで演奏しています。彼のバラード演奏は心にしみます。それは彼が奥深く秘めていた「歌心」からです。
「ベスト・バラード」では、ジャズのスタンダードを演奏しています。「ホワッツ・ニュー/WHAT'S
NEW」。これはかつて恋人同士だった二人が再会した一瞬のストーリーを切り取っています。
偶然に再会した二人。もうそれぞれにパートナーがいるかもしれない。でも、それを聞き出すことはできません。まだ愛しているから? リンダ・ロンシュタットのような女性歌手が歌うとこんな風な感じになります。
英語の歌詞の聴き処は
Adieu! Pardon my asking what's new
Of course you couldn't know I haven't changed, I still love you
so
です。
『お変わりないようね。今はどうしているの。あなたはちっとも変わっていないのね。相変わらず本当にハンサム。』
短い会話があります。そして二人はそれぞれの世界に別れて戻っていきます。最期に彼女はこういいます。
『それじゃ、これでね。どうしてるのなんて聞いて悪かったわ。(ここからは独り言)あなたは知るわけもないわ。私が今もずっとあなたを愛しているってこと。ちょっと知りたかっただけなの。あれからあなたがどうしていたのかを』
歳を重ねていけば、この人だけなんてことはないはず。失った恋もあるはず。偶然、出会うことなんかない。でも、もしも出会ってしまったら。きっとこの二人は、それぞれの道を歩き始めた時に一度だけ振り返ったはずです。でも、それだけのこと。
ジャズのスタンダード・バラードは、ほとんどが恋の歌です。もう一つの演奏曲。「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ/YOU
D'ONT KNOW WHAT'S LOVE IS」。
この曲は「恋とは何でしょう」と訳されている名曲。女性が歌うと、「この人は(鈍感で)気づかないんだから...」と恋の始まりの予感も感じさせる曲です。こちらもいいです。
『ジョン・コルトレーン/ベスト・バラード』
ホワッツ・ニュー/イン・ア・センチメンタル・ムード/マイ・リトル・ブラウン・ブック/アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー/ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ/セイ・イット/ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル/ラッシュ・ライフ/マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ/ネイチャー・ボーイ(全10曲)
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