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 太陽の光にあたれない難病の少女が主人公の映画「タイヨウのうた」。初主演で女優デビューを果たしたYUI。メジャーになる前から、気になっていた若い女の子のシンガー・ソング・ライター。

 公式プロフィールによると、1987年3月26日、福岡県生まれ。地元の音楽塾に通い、覚えたてのコードで曲作りを始める。第一作は「Why me」。やがて福岡市天神であぐらをかきながらギターの弾き語りを始める。

 2004年3月、塾関係者の紹介でソニーミュージックグループのSDオーディションに応募、約2万人の応募者から10人の中に残り、最終審査へと進む。その時の逸話はファンの間では伝説になっているという。路上ライブと同じようにあぐらで自作曲を歌った。演奏できるのは2曲。「Why me」「It's happy line」を選んだが、どうしても聴いてもらいたいと「I know」も演奏、審査員全員が最高点をつけたという。彗星のように音楽シーンに登場したシンデレラガール。




LIFE
 恋愛や友情を主題にし、前向きすぎるな、甘すぎるなと思うヒット曲が多い中、彼女の歌は、変わっている。最初に聞いたのは「LIFE」。歌っているのは、若い女の子に違いなと思ったのに、タイトルが「ライフ」。そんなにも若いのに、どんな風に「人生」を考えているのだろうか。その歌詞の中に、ドキッとさせられるフレーズがある。

 カンタンに 行かないから 生きてゆける

 このフレーズだけで、もう聴くもののハートはわし掴みされる。それなりに生きてしまった大人が斜に構えて、いいそうなセリフ。ありふれた日常の中で、いつも考えているわけではない....。大人は「カンタンに行かない」というライフの中に、自分自身が投影されていて、それに拘って生きて行かざるを得ないのを知っている。

 でも、彼女の「カンタンに行かない」は、そんな大人のようには老成してはいない。地方都市で、退路も断つように高校も中退し、若くして音楽で生きていくと決心した少女が、自らの意思で、音楽業界に飛び込んでいく。故郷への思いの全てを残して東京へと旅立つ。そんな現実との間の「カンタンに行かない」手負い傷のような感覚。

[全編:YUI/歌詞:LIfe/うたまっぷ歌詞無料検索] 



Simply white(アルバム:FROM ME TO YOU 収録)
 楽曲「Simply white」にはこんなフレーズがある。

 人生って複雑だね
 荷物は増えてゆくの いらないはずなのに

 ルックスはアイドルのよう。いつもジーンズをはいている小柄な女の子。その女の子に「人生って複雑だね」といわれると、ドキっとする。ジャケット写真の表情は凛として何かに怒っているよう。瞳はこちらを射抜くよう。

 この楽曲には、上のフレーズを受けて、もうひとつキーとなるフレーズがある。それは

 欲しいものなんてないよ
 捨てれないものばかりある

 この女の子は何かシンプルにはいかないものを抱えている。大人の複雑さは澱のように時間と共に貯まっていったもの。そんなに生きてはいない彼女の複雑はもっと先鋭なもの。

 そして最後に

 考えすぎちゃって 疲れる

と自分を許しているのでホッしたりしている。

全編:Simply white/歌詞:LIfe/うたまっぷ歌詞無料検索] 


TOKYO
 「TOKYO」。たった一人でこの街にやってきた時の心情が鮮やかに表現されている。

 正しいことばかり選べない
 それくらいわかってる

 住み慣れた故郷を旅立つ日、この楽曲の主人公は、この選択は正しいのか戸惑いながら、友達にメールする。ホームから電話もした。「でもなんか違う気がした」とすぐに内省もしている。

 もってきたのは古いギターひとつ。そのギターをくれた人は「東京は怖いって言ってた」。写真は全部、置いてきた。そして

 答えを探すのは もうやめた
 間違いだらけでいい

と.....。

 この女の子には、故郷へのアンビジレンツな感情があるのかもしれない。故郷でも風変わりな女の子で通っていたに違いない。

 編集部員は東京生まれなので、故郷への思いとは何なのかは知らない。故郷は関係が濃密なのに比例して違和を受け入れないのかもしれない。彼女はきっと新しい居場所をまだ探している。そして、そのためには「正しいことばかり選べない」という「カンタンに行かない」「人生の複雑さ」を知っている。でも、まだ20歳。今を、世界をこんな風に捉えている。

全編:TOKYO/歌詞:LIfe/うたまっぷ歌詞無料検索] 

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