オマーラ・ポルトゥオンド(Omara Portuondo)。キューバの至宝と呼ばれる歌姫。10月1日、東京新宿の厚生年金会館で「Omara
Portuondo Gracias Tour 2008」が開催された。
77歳。キューバの苦難と激動の歴史を経て醸成された歌声はまるで彼女の人生の全てを語るかのよう。そしてひとつひとつの仕草はまるで少女のように可愛らしく、それでいて、時にハッとするように艶やか。またの来日を期待。
オマーラ・ポルトゥオンド。彼女を知ったのは1999年の映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だった。この映画はキューバの老ミュージシャンたちの演奏ツアーを記録したヴィム・ヴェンダース監督によるドキュメンタリー。
米国のミュージシャン、ライ・クーダーは世界各地の音楽の探索を続け、自身のアルバム製作に反映させていた。彼がキューバを旅行した際、国外では、その存在を殆ど知られていなかった老ミュージシャンとセッションを行った。それが契機となり、1997年にアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が製作され、その後の映画製作へと繋がっていく。
キューバ。革命前には米国資本に席巻され。バチスタ政権による独裁が続いていた。豊かな米国人相手に豪華なショーが夜な夜な開かれていた。そんなクラブのひとつが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。革命後、そこに集ったミュージシャンたちの多くは職を失い、職人に身をやつしたりして生活していた。そんな時、ライ・クーダーが彼らを見つけだす。
映画の中にスタジオ録音のシーンがある。当時、72歳だった男性ヴォーカリストのイブライム・フェレールとオマーラ・ポルトゥオンドが1本のマイクを挟んで、恋の歌をジュエットする。この二人はかつて恋人同士だったのかもしれない。そんな思いを抱かせるほどセクシーな歌声。二人は決して触れ合っていないけれど、まるで抱擁しているかのよう。
映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とキューバへの思いはまた機会を改めて語りたい。
オマーラ・ポルトゥオンドは、1930年10月にハバナ近郊のカヨ・ウエソ地区に生まれた。彼女の音楽スタイルはフィーリンと呼ばれている。
キューバにはより土着性の強いソンと呼ばれる音楽スタイルがあるが、フィーリンは、キューバ風にアレンジされたラテン音楽にジャズの味わいを加えたもの。
彼女は革命後もコーラス・グループ「ラス・ダイーダ」の一員として活動を続け、後にソロに転向、共産圏を中心に世界中をツアーし、フランスや日本でも歌っている。そして、今でも「フィーリンの恋人」として多くのキューバ人から賞賛されている。
最近では、ブラジルの女性シンガー、マリア・ベターニャとの共演アルバム「Omara Portuondo & Maria
Bethania」をリリースし、現役のシンガーとして精力的に活動している。ちなみに今回の来日公演は、「Omara Portuondo
Gracias Tour 2008」はアルバム「Gracias」のリリース伴う世界ツアーの一環として開催された。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・プレゼンツ・オマーラ」
1.ラ・シティエラ
2.エ・ペルディード・コンティーゴ
3.ドンデ・エスターバス・トゥ
4.春の蝶
5.カンタ・ロ・センティメンタル(叙情歌)
6.彼女と私
7.ごまかさないで
8.ノ・メ・リョーレス・マス(もう泣かないで)
9.ベインテ・アニョス(20年の歳月)
10.私が愛した人
11.いつも私の心に
「グラシアス」
前作「愛の花」から4年ぶりとなるアルバム。タイトル・ナンバーでは軽やかなボサ・タッチのスウィングも楽しませてくれるなど、「愛の花」の続き、ブラジル的なテイストな作品に仕上がっている。
ブラジル音楽ファンにはお馴染みの大物シコ・ブアルキが共演、さらにキューバからパブロ・ミラネース、チューチョ・バルデース、カチャイートが客演。アフリカからもリチャード・ボナも参加するなど、ゴージャスな音作りに仕上がっている。
「Maria Bethania & Omara Portuondo」[Import] [from US]
1.Lacho
2.Menino Grande
3.Nana Para un Suspiro(Semillita)
4.Poema Lxiv/Palabras/Palavras
5.Tal Vez
6.Voc
7.Arrependimento
8.Mil Congojas
9.S Vendo Que Beleza(Marambaia)
10.Para Cantarle a Mi Amor
11.Caipira de Fato/El Amor de Mi Boho
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